Free Software というものをご存知ですか?
「Free Software(自由ソフトウェア)」は利用者の自由とコミュニティを尊重するソフトウェアを意味します.
ソフトウェアは 実行する自由,改変する自由,コピーする自由,再配布する自由があるべきだという思想です. この思想を大切にしている OS として,Debian があります.
Windows や macOS は Free Software ではありません.
利用規約などあまり読まない人がいるかもしれませんが,実際読んでみると多くの制約が書かれています.
windows のライセンスは典型的です.
c.制限。製造業者またはインストール業者、およびマイクロソフトは、本ライセンス条項において明示的に許諾されていない権利 (知的財産に関する法律に基づく権利など) をすべて留保します。たとえば、このライセンスは、次の行為に関してお客様にいかなる権利も与えるものではなく、お客様は次の行為を行うことはできません。 (i) 本ソフトウェアの機能を分離して使用または仮想化すること。 (ii) 本ソフトウェアを公開、複製 (許可されているバックアップ用の複製を除きます)、レンタル、リース、または貸与すること。 (iii) 本ソフトウェアを譲渡すること (本ライセンス条項で許諾されている場合を除きます)。
このように,たとえ OS 購入したとしても貸与や譲渡に制限があります.
macOS のライセンスにも制約があります
N. リバースエンジニアリングの禁止 お客様は、Apple ソフトウェアおよびこれにより提供されるサービスの全部または一部に対し、複製(本契約またはお客様に適用される利用ルールで明示的に許可される場合を除きます)、逆コンパイル、リバースエンジニアリング、逆アセンブル、ソースコード解明の試み、暗号化、修正または二次的著作物の創作を行うことはできないものとし、これらの行為を行わないことおよび他者がこれらの行為を行なうことを可能ならしめないことに同意されたものとします(ただし、上記の制限が適用法により禁止される場合、または Apple ソフトウェアに含まれるオープンソースコンポーネントの使用に適用されるライセンス条件を除くものとします)。
少しカスタマイズしたいという場合でも,Apple のソフトウェアは修正や二次的著作物の創作が禁止されています.どのように振る舞っているのか知りたいとしても,ソースコードの解明に当たるので NG です.
このような制約は,ソフトウェアが持っている簡単にコピーできる / 改変できる / 共有できるという利点を活かせていないと捉えることができます.
Debian のインストールを通して Free Software という考え方もあるということを知っていただければ幸いです.
ISO をダウンロードする
ドライバなどをあとからインストールするのは大変なので non-free 版を使います.
Free Software を語ったあとに non-free 版を使うのかと怒られるかもしれませんが,ごめんなさい.許してください. ネットワークのドライバは non-free です.通常版をインストールすると,インターネットに接続できないことになるので仕方ありません.
iso ファイルをダウンロードします.
https://cdimage.debian.org/cdimage/unofficial/non-free/cd-including-firmware/
ダウンロードしたものが正しいものなのか確認
md5
md5sum Downloads/firmware-9.8.0-amd64-DVD-1.iso
出てきたチェックサムが,ダウンロードしたページのものと一致することを確認します.
boot USB を作成する
USB の情報を確認する
sudo fdisk -l
で確認します
Disk /dev/nvme0n1: 238.5 GiB, 256060514304 bytes, 500118192 sectors
Units: sectors of 1 * 512 = 512 bytes
Sector size (logical/physical): 512 bytes / 512 bytes
I/O size (minimum/optimal): 512 bytes / 512 bytes
Disklabel type: dos
Disk identifier: 0xbf2939e0
Device Boot Start End Sectors Size Id Type
/dev/nvme0n1p1 2048 484306943 484304896 231G 83 Linux
/dev/nvme0n1p2 484308990 500117503 15808514 7.6G 5 Extended
/dev/nvme0n1p5 484308992 500117503 15808512 7.6G 82 Linux swap / Solaris
Disk /dev/sdb: 7.4 GiB, 7918845952 bytes, 15466496 sectors
Units: sectors of 1 * 512 = 512 bytes
Sector size (logical/physical): 512 bytes / 512 bytes
I/O size (minimum/optimal): 512 bytes / 512 bytes
Disklabel type: dos
Disk identifier: 0x49ab43da
Device Boot Start End Sectors Size Id Type
/dev/sdb1 * 0 7143423 7143424 3.4G 0 Empty
/dev/sdb2 21488 22319 832 416K ef EFI (FAT-12/16/32)
USB が /dev/sdb1
として刺さっていることがわかります.
なので /dev/sdb1
に対して アンマウント,フォーマット,書き込みを行います.
ご自身の環境に合わせて /dev/sdb1
の部分を変更してください.
アンマウントする
sudo umount /dev/sdb1
フォーマットする
sudo mkfs.vfat /dev/sdb1
書き込む
sudo dd if=/home/hagi/Downloads/debian.iso of=/dev/sdb1 bs=1048576
/home/hagi/Downloads/debian.iso
とあるのは,私の計算機でのダウンロードした iso ファイルのパスです.
ご自身の環境に合わせて変更してください.
これで boot USB の作成が完了しました.
Debian のインストール
BIOS の設定:
thinkpad の場合,起動時に enter キーを押すと BIOS の設定画面に入ることができます.
中古で買った PC の場合など,他人が使ったものである場合,余計な設定になっている可能性があるので BIOS の設定をリセットします.
Secure Boot を無効化
Security > Secure Boot で Enter キーを押すと,Secure Boot を無効化することができます.
ブートモードの変更
Startup > UEFI / Legacy Boot において,ブートの方法を Legacy Only
に設定します.
ブート順の変更
Startup > Boot で Enter キーを押すと,ブートの順を変更することができます.
以上で BIOS の設定は終わりです. 保存して終了してください.
インストール開始
Debian GNU/Linux Installer boot menu
Install を指定します.
Select a language
English を指定します.
Select your location
other から Asia ,そして Japan を選択します.
Config locales
United States
Configure the keyboard
ご自身のキーボード配列を選択してください.
American English
Detect network hardware
Load missing firmware from removable media? Yes
Configure the network
wlp4s0: Intel Corporation Wireless 8260
- 自分の Wi-Fi の SSID を選択する
- 自分の Wireless network type を選択する
- 自分の Wi-Fi のパスワードを入力する
Configure the network
ホスト名:計算機本体の名前です. 好きな名前を設定してください.私のボスは,”愛することができる名前” に設定するよう,アドバイスしてくださいました.
Set up users and passwords
Root password:
root ユーザのパスワードです.確認のために 2 回入力します. パスワードを確認するときは,チェックボックスにカーソルがある状態でスペースキーを押します.
Full name for the new user: ユーザの名前です.あまり使う機会が無いので深く考えなくていいです.
Username for your accout: ログインするときに用いるユーザ名です.あとで使うので忘れないでください.
Partition disks
デュアルブートしないので,ディスク全体を使います.
- Guided - use entire disk
インストールするディスクを選択します.自分の計算機の SSD/HDD を選択してください.
- SCSI2 256GB ATA SAMSUNG
自分で調整するのは面倒なのでおすすめの設定を利用します.
- All files in one partition (recommended for new users)
- Finish partitioning and write changes to disk
最後の確認です.もともと入っていたデータが消えるので,少しでも不安なら中止してください. Yes を選択すると次に進みます.
- Write the changes to disk? -> Yes
Configure the package manager
Japan
どこでもいいのでミラーサーバを選択します.
プロキシなどの設定が必要な場合はプロキシの URL を書きます.
Configure popularity-contest
No
Software selection
Debian desktop Environment のチェックを外す.
これが重要です.ここで失敗するともう一度入れ直しです.
チェックを外すときはスペースキーです.
お好みで以下のチェックを入れてもいいです.
- print server
- SSH server
- standard system utilities
Install the GRUB boot loader on a hard disk
ブートローダーをインストールするので,Yes を選択 Yes /dev/sda を選択
Finish the installation
USB を抜いて Continue
完了すると,PC が再起動します.
基本的な環境設定
ログイン
各種設定をするために root でログインします.
username と表示されているところで root
と入力します.
パスワードは先程設定した root ユーザのパスワードです.
パスワード入力時,表示はされませんが入力がされているので気にせず入力してください.
インターネット接続
wpa_supplicant
の設定ファイルを書きます.
/etc/wpa_supplicant/wpa_supplicant.conf
というファイルを作成して,以下の内容を書き込みます.
ファイルの作成は以下のコマンドで出来ます.
touch /etc/wpa_supplicant/wpa_supplicant.conf
次に編集です.
デフォルトのエディタとして,vi
もしくは nano
があります.
どちらも使ったことが無いという人は nano
をおすすめします.
nano で今回のファイルを編集する場合,nano /etc/wpa_supplicant/wpa_supplicant.conf
として nano を起動します.
network = {
ssid="ここに SSID(Wi-Fi の名前)を書く"
psk="ここに Wi-Fi のパスワードを書く"
}
書き終えたら保存して終了します.
nano で保存して終了するには,Ctrl キー
を押しながら x キー
です.すると,保存するかの確認が出るので y キー
.最後にファイル名が出るので Enter キー
を押すと保存して終了されます.
ネットワークインターフェースの名前を確認します.
# iwconfig
wlp2s0 IEEE 802.11 ESSID:off/any
Mode:Managed Access Point: Not-Associated Tx-Power=22 dBm
Retry short limit:7 RTS thr:off Fragment thr:off
Encryption key:off
Power Management:on
lo no wireless extensions.
enp0s31f6 no wireless extensions.
wlp2s0
が自分の計算機のインターフェース名とわかりました.
/etc/network/interfaces
にネットワークインターフェースの設定が書かれています.先程作成した wpa_supplicant.conf
を利用するということを書きます.
# This file describes the network interfaces available on your system
# and how to activate them. For more information, see interfaces(5).
source /etc/network/interfaces.d/*
# The loopback network interface
auto lo
iface lo inet loopback
# 自分のインターフェース名にする
# ↓
iface wlp2s0 inet dhcp
wpa-conf /etc/wpa_supplicant/wpa_supplicant.conf
これで設定を書くことが出来たので,実際に起動します.
ifup wlp2s0
iwconfig
から接続されている Wi-Fi の SSID を確認することができます.
パッケージのアップデート
apt-get update
apt-get upgrade
必須アプリケーションのインストール
debian にはデフォルトで sudo
が入っていないので,インストールします.
エディッタは好きなものをインストトールしてください.
apt-get install sudo vim emacs25 make curl firefox-esr
通常ユーザに権限を追加する.
vim 派の人
export EDITOR=$(which vim)
visudo
emacs 派の人
export EDITOR=$(which emacs)
visudo
開かれたファイルに以下を追加します.
自分のユーザ名 ALL=(ALL:ALL) ALL
ユーザ名が hagi の場合の例は以下となります
hagi ALL=(ALL:ALL) ALL
これでユーザに権限が与えられました.
CapsLock を Ctrl に割り当てる
A キーの左にある CapsLock キー ですが,正直使う頻度が低いです. なので,CapsLock を Ctrl に割り当てます.
/etc/default/keyboard
の XKBOPTIONS
を以下のように変更します.
XKBOPTIONS="ctrl:nocaps"
再起動後,CapsLock キーは Ctrl キーとして扱われるようになります.
root ユーザでの作業は以上です.ここからは一般ユーザで作業します.
xpywm インストール
Hiroyuki Ohsaki 氏が作成した xpywm というウィンドウマネージャーをインストールします.
http://www.lsnl.jp/~ohsaki/software/xpywm/
手順は上記サイトと同一ですが,注意しないと行けない点として make install
は root で行わないといけないという点です.
まず,一般ユーザでログインします.whoami
で root
とでなければ OK です.
Makefile のダウンロード
wget http://www.lsnl.jp/~ohsaki/software/xpywm/Makefile
インストール
make install
は root で行わないと行けないので,su コマンドで root に切り替えます.
su root
を打つと,root のパスワードが聞かれるので入力します.
su root
make install
exit
インストール完了後,一般ユーザに戻るために exit
コマンドを打ちます.
設定ファイルを作成します.
make fetch-skelton
cp skel.xinitrc ~/.xinitrc
cp skel.Xdefaults ~/.Xdefaults
cp skel.emacs ~/.emacs
xpywm を起動する
startx
ウィンドウマネージャーが起動します.
各種ショートカットは以下の URL から確認することが出来ます. http://www.lsnl.jp/~ohsaki/software/xpywm/
日本語入力
日本語入力を行うために skk
をインストールします.
sudo apt-get install ddskk skkdic uim uim-skk dbskkd-cdb skkdic-cdb
ブラウザで skk を利用するために ~/.uim
を作成し,以下の設定を書きます.
(define default-im-name 'skk)
カスタマイズ
好みに応じて好きなソフトウェアをインストールしてください.
私は,zsh
, zplug
, tmux
, mew
などをインストールしています.